2023.03.27 03:26第一章 『 芽吹きの後の大地の躍動とそれに呼応する人の記憶 』厳しい冬が終わりを告げ、地表には小さな黄色い花がまずは咲き出す。福寿草の花だ。虫が少しずつ目覚め始め、蜜蜂が姿を現し始める。茶と白の色しかなかった世界に暖色の色彩が目立ちだすと春の訪れ喜びとこれから次の冬を越す為の活動の無事を祈りかつて我々の祖先は山や森の神に祈るための宴を催していた。手探りでこの宴を再現する為にしばらくの間、私は昼夜問わず森や山に入りあてもなく歩き、自分自身が感覚で感じ取れる全て...
2023.03.27 03:20ヤマノタミ -プロローグ-山の民プロローグ御伽噺を話そう。それはかつて「日出ずる国」と呼ばれ黄金の国「ジパング」とも称されたとある場所の表には語られない人々の話だ。彼らははるか太古の昔から山の奥地にいて土地に根付かず北から南まで自由に移動し山の恵を糧に暮らしを続けてきた。彼らは「蜜蜂」を自然と自分たちをつなぐ神の使いと崇め、里に定住する民とは深く交わる事なく独自の文化を醸しながら集団形成をしていった。それは時代によってヤマ...